デジタルネイティブ世代のスタンダード 小学校のプログラミング教育ってなに?

令和の教育スタンダード「GIGAスクール構想」

2019年12月に文部科学省より発表され、現在進められているGIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想。

新学習指導要領の実施により小中学校、高校、大学の接続的な移行期間として教育改革が行われるなか、ICT環境の整備、人材育成を目的として、学校にデジタル教材が導入され、児童生徒が「ひとり1台」の状況でパソコンやタブレット型端末を使える環境を2023年度までに整備するための政策が進められています。2021年3月時点での文部科学省からの発表によると、公立小中学校の約98%で端末の整備が完了しています。

生活の中でスマホやタブレット、パソコンが身近にあり、デジタルネイティブとして育っていっている子どもたちにとって、タイピングやインターネットの利用などコンピュータの基本的取り扱いは当たり前のものとして存在。教育においてもスタンダードになっていきます。

プログラミング的思考、STEAM教育とは

GIGAスクール構想のもと、新学習指導要領ではプログラミング教育がスタートしましたが、子どもたちはどんなことを学んでいるのでしょうか?プログラミング教育について、知っておきたいことをチェックしていきましょう。

小学校プログラミング教育とは?

文科省新指導要項では以下のように紹介されています。

「情報活用能力の育成を図るため、各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること」

また、以下の資質・能力の「3つの柱」に沿って、発達の段階に即して育成するとされています。

【知識及び技能】
身近な生活でコンピュータが活用されていることや、問題の解決には必要な手順があることに気づくこと。

【思考力、判断力、表現力など】
発達の段階に即して、「プログラミング的思考」を育成すること。

【学びに向かう力、人間性など】
発達の段階に即して、コンピュータの働きを、より良い人生や社会づくりに生かそうとする態度をムリなく養成すること。

プログラミング的思考とは?

指導要項から小学校プログラミング教育が、タイピングなどコンピュータの基本的なスキルを学ぶにしても、プログラミング言語そのものを学ぶというわけではないことがうかがえます。では、プログラミング教育・プログラミング的思考とは何でしょうか?

それは、「コンピュータを動かすための考え方=プログラミング的思考(論理的思考力)」を身につけることです。

論理的思考力とは、「物事には手順があり、手順を踏むと、物事をうまく解決できるといった論理的に考えていく力」のことです。時代を超えて必要とされるものごとの根底にある考え方や思考のパターン・基礎技術を身につけることを目的としたものであり、潜在的に行っていたものを顕在化させていくことが、小学校で行われているプログラミング教育といえます。

プログラミングという言葉にコンピュータを扱う技術を求められるように感じてしまいますが、実は、子どもは幼いころから潜在的にプログラミング的思考を行っています。

例えば、お砂場遊び。「泥だんごを作るとき、水を入れ過ぎると崩れやすい。だから、水量を調整する」といったことをPDAC(Plan/計画、Do/実行、Check/評価、Action/改善)サイクルで何回も繰り返し行っていますね。

料理においても同じ。食材を集め、手順を踏んで料理を完成させます。好みに合わせてアレンジを加えたり、時短のために手順の効率化を図ったり。家庭においてもプログラミング的思考は生活の中でごく自然に行われています。

単純に言えば、この材料が置き換わるだけのこと。論理的に物事を考え行動するための思考を示しています。

そして、プログラミング的思考は各教科で導入され、STEAM教育につながっていきます。

STEAM教育が与えるもの

GIGAスクール構想の根底として、グローバル人材育成が掲げられていますが、その育成に欠かせないものとして、STEAM教育も注目を集めています。

STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(ものづくり)、Art(芸術・教養)、Mathematics(数学)のこと。先に記したように、学校の授業にプログラミング教育が導入されることで、科目それぞれの教育の意味がより深いものになっていき、次世代の子どもたちは次の力を求められるとされています。

・文章や情報を正確に読み解き、対話する力

・科学的に思考、吟味し活用する力

・価値を見つけ出す感性と力、好奇心や探求力

学習指導要領改訂にともない、日本の教育は「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」を子どもたちに考えさせ、「生きる力」を確実に育むことを目指しています。これは、自分の道を切り拓く力や多様性を理解し他者と協力していく力となり、グローバル人材に欠かせないものとなります。

プログラミング教育の今と未来

コロナ禍でのスタートとあって、教育現場での活用は困難もあり各区市町村により進捗は変わりますが、現在、アナログ、デジタルミックスの授業が進められています。例えば、アプリを使用した宿題、授業でPowerPointを使用したプレゼンテーションを行うなど。また、ICT環境を活用し文部科学省が開催した「GIGA スクール特別講座~君も宇宙へ!~」では、GIGA スクールと宇宙飛行士が 連携した教育活動として、宇宙ステーションとの交信も行われました。夏休み期間中は、ICT 端末を活用した課題(生活の記録、日記、自由研究など)が出されている学校もあることでしょう。

オンライン登校などの試験運用も行われており、より便利に、いかなる時も子どもから学びの機会を奪わない環境整備も進められています。便利になる反面、子どものネット依存も心配になるところ。ご家庭においても適切な使用時間、使用方法などのルールを決めることは必須です。その上で子どもの思考を促しながら、学びを見守っていくことがプログラミング教育を成功させる秘訣となるでしょう。